日月(ひつ九)の巻 第030帖

日月(ひつ九)の巻 第30帖
 おのころの国成り、この国におりまして あめとの柱見立て給ひき。 に伊邪那岐命伊邪那美命島生み給ひき。初めに

水蛭子ひるこ
あわ島、

生み給ひき。この御子、国のうちにかくれ給ひければ、次にのりごちてのちみ給へる御子、

淡道之穂之三別島あわじのほのさわけしま
伊予の二名ふたな島、

この島、

愛媛えひめ
飯依比古ひひよりひこ
宜都比売けつひめ
建依別たてよりわけ

と云ふ。次、

隠岐おき三子みつこ島、
天之忍許呂別あまのおしころわけ

次、

筑紫島つくししま

この島、

白日別しらひわけ
豊日別とよひわけ
建日向日豊久土比泥別たけひむかひとよくづひぬわけ
建日別たてひわけ

次、

伊伎島いきしま
天比登都柱あめのひとつはしら

次、

津島つしま
天狭手依比売あめのさてよりひめ

次、

佐渡島さとしま

次、

大倭秋津島おおやまとあきつしま
天津御空豊秋津根別あまつみそらとよあきつねわけ

次、

吉備之児島建日方別きびのこしたてひかたわけ

次、

小豆島あづきしま
大野手比売おおぬてひめ

次、

大島大多麻流別おおしまおほたまるわけ

次、

女島ひめしま
天一根あめひとつね

次、

知詞島ちかのしま
天忍男あめのおしを

次、

両児島ふたこしま
天両屋あめふたや

二島にしま八島やしま六島むしま、合せて十六島生み給ひき。次にまたのり給ひて、大島、小島、生み給ひき。

淡路島あわじしま二名島ふたなしま、おきの島、筑紫つくしの島、壱岐いきの島、津島つしま佐渡さどの島、大倭島おおやまとしま児島こじま小豆島あづきしま大島おおしま女島ひめしま、なかの島、二子島ふたこしま

の十四島、島生みましき。次に、いぶきいぶきて、御子神 生み給ひき。

大事忍男神おほことおしをのかみ大事忍男神オホコトオシヲノカミ
石土毘古神いしつちひこのかみ石土毘古神イシツチヒコノカミ
石巣比売神いしすひめのかみ石巣比売神イシスヒメノカミ
大戸日別神おほとひわけのかみ大戸日別神オホトヒワケノカミ
天之吹男神あめのふきをのかみ天之吹男神アメノフキヲノカミ
大屋毘古神おおやひこのかみ大屋毘古神オオヤヒコノカミ
風木津別之忍男神かさけつわけのおしをのかみ風木津別之忍男神カサケツワケノオシヲノカミ
海神わたのかみ海神ワタノカミ
大綿津見神おほわたつみのかみ
水戸之神みなとのかみ水戸の神ミナトノカミ
速秋津比神はやあきつひのかみ
速秋津比売神はやあきつひめのかみ速秋津比売神ハヤアキツヒメノカミ
風神かぜのかみ風神カゼノカミ
志那都比古神しなつこひこのかみ
木神きのかみ木神キノカミ
久久能智神くくのちのかみ
山神やまのかみ山神ヤマノカミ
大山津見神おほやまつみのかみ
野神ぬのかみ野神ヌノカミ
鹿屋野比売神かやぬひめのかみ
野椎神ぬつちのかみ
鳥之石楠船神とりのいわくすつねのかみ
天鳥船神あめのとりふねのかみ
大宜都比売神おほけつひめのかみ(おほけつひめのかみ)、大宜都比売神オホケツヒメノカミ
火之夜芸速男神ひのやきはやをのかみ
火之煇比古神ひのかがひこのかみ

生みましき。速秋津日子はやあきつひこ速秋津比売はやあきつひめ、二柱の神 川海かわうみりもちわけ、ことわけて、生ませる神、

沫那芸神あわなぎのかみ
沫那美神あわなみのかみ
頬那芸神つらなぎのかみ
頬那美神つらなみのかみ
天之水分神あめのみくまりのかみ
国之水分神くにのみくまりのかみ
天之久比奢母智神あめのくひさもちのかみ
国之久比奢母智神くにのくいさもちのかみ

次に、大山津見神おおやまつみのかみ野椎神ぬつちのかみの二柱神、山野やまぬに依りもちわけて、ことあげて生みませる神、

天之狭土神あめのさつちのかみ国之狭土神くにのさつちのかみ
天之狭霧神あめのさぎりのかみ国之狭霧神くにのさぎりのかみ
天之闇戸神あめのくらとのかみ国之闇戸神くにのくらとのかみ
大戸惑子神おほとまどひこのかみ大戸惑女神おほとまどひめのかみ
大戸惑子神オホトマドヒコノカミ大戸惑女神オホトマドヒメノカミ

生みましき、伊邪那美神やみこやしまして、たぐりになりませる神、

金山比古神かなやまひこのかみ金山比売神かなやまひめのかみ

くそになりませる神、

波仁夜須比古神はにやすこのかみ波仁夜須比売神はにやすひめのかみ

尿ゆまりに成りませる神、

弥都波能売神みつはめのかみ和久産巣日神わくむすびのかみ

この神の御子、

豊宇気比売神とようけひめのかみ

と申す。ここに伊邪那美神いざなみのかみ、火の神 生み給ひて、ひつちとなり成り給ひて、根の神の中の国に神去り給ひき。ここに伊邪那岐神泣き給ひければ、その涙になりませる神、

泣沢女神なきさわめのかみ

ここに迦具土神かくつちのかみ斬り給へば、その血 石にこびりて、

石析神いわさくのかみ根析神ねさくのかみ石筒之男神いわつつのおのかみ
雍瓦速日神みかはやひのかみ樋速日神ひはやいのかみ
建御雷男神たけみかつちおのかみ建布都神たけふつのかみ
豊布都神とよふつのかみ

御刀みはかし手上たかみの血、

闇於加美くらをかみ
闇御津羽神くらみつはのかみ

ここに殺されし迦具土かぐつち御首みかしらに成りませる神、

正鹿山津見神まさかやまつみのかみ

御胸に

於藤山津見神おとやまつみのかみ

みはら

奥山津見神おくやまつみのかみ

みほと

闇山津見神くらやまつみのかみ

左の御手に

志芸山津見神しきやまつみのかみ

右の御手に

羽山津見神はやまつみのかみ

左の御足に

原山津見神はらやまつみのかみ

右の御足に

戸山津美神とやまつみのかみ

成りましき。ここに斬り給へる御刀みはかし

天之尾羽張あめのおはばり
伊都之尾羽張いづのおはばり

と云ふ。ここにいも恋しまし給ひての国に追いで給ひき。十一月二十五日夜、一二