春の巻 第十帖
一切のものは (ウズ)であるぞ。同じことくりかへしているように、人民には、世界が見えるであろうなれど、一段づつ進んでいるのであるぞ。木でも草でも同様ぞ。前の春と今年の春とは、同じであって違って居らうがな。行き詰りがありがたいのぢゃ。進んでいるからこそ、行きあたり行きつまるのぢゃ。省みる時あたえられるのぢゃ。さとりの時与えられるのぢゃ。ものは、はなすからこそ摑めるのぢゃ。固く握って戸しめていてはならんのう。扉あけておけと申してあろうが。着物ぬいで裸体となることつらいであろうなれど、ぬがねば新しい着物きられんぞ。裸になってブツカレよ。神様も裸になってそなたを抱いてくださるぞよ。重い石のせたタクアンはうまいのであるぞ。